Hey Siri

ある日の昼下がり車でラジオを聞いていた。
前日包丁で指を切った時に絆創膏を切らしていることに気づき、近所のドラッグストアへ買い出しに行ったのだ。家で缶詰めになっていた僕は久しぶりに外へ出た。当然いつもはマスクが並んでいるであろう棚を横目にそそくさと絆創膏を手に取り、ビニールの垂れ下がったレジで会計を済ませた。
家での手持ち無沙汰な状況を解消すべく、何か新しい本が欲しいなと思った僕はそのまま近くの大きな書店へ車を走らせた。そこは初めて行く書店だったのだが、中にカフェやTSUTAYAも併設しているなかなかの大型書店である。ひと通り文庫本コーナーを物色し、元々気になっていた又吉直樹の「東京百景」を買った。ちょっとした買い物欲を発散させたのだが、車のシートに着席すると鬱屈とした気持ちはすぐ懐に帰ってきた。

数日前からニュースを見るのが辛い。情報を集めなきゃと躍起になって四六時中ニュースを気にしていたのだ。よく考えたら情報がアップデートされるまではどの番組も同じことばかり言っているのだからあまり効果的ではない。そればかりかこうやって心が荒んできてしまう。
そしてTwitterが辛い。稚拙な知識と自己顕示と精神論が複雑に絡み合った猥雑な主張が辛い。それが知っている人が発信している物だと尚辛い。平凡な言葉で平凡に何かを揶揄するのは悲しいほど滑稽である。

エンジンをかけ、軽いため息なんかついて項垂れているとラジオで曲が流れた。自分でも触れることのできないような自分の内側に触れたその歌にドキリとした。駐車場ですこし泣いて僕は何食わぬ顔で家路についたのだった。
僕はラジオが好きだ。

本当は僕の好きな映画について書こうかと思っていたのだけどそれはまた今度にしよう。

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