僕はヨーロッパの中でフランスが好きだ。なんというか、皮肉っぽいところも、理屈っぽいところも、こだわりが強いところも、何だか好きだ。
先日の文章にも書いたが、初めてヨーロッパに行ったのもミラノからパリをバスで目指すというものだった。写真はその途中で立ち寄ったPont du Gardという水道橋である。場所的には南仏から少し入った、アヴィニョンの近く。紀元前にローマ人によって作られたと言われるこの橋は世界遺産にも指定されている。
訪れた時間は夕方。とても綺麗だった。荘厳な三階建ての巨大な橋。そして夕日に照らされた水面がキラキラしていたあの素晴らしい風景は今も鮮明に覚えている。
橋というつながりというほどでもないのだが、僕には大好きなフランス映画の一つに「ポンヌフの恋人」がある。鬼才レオス・カラックスが手がけたこの作品は、当時日本でもロングヒットを記録していた為知っている人もかなり多いだろう。過酷かつ非常に純粋なラブストーリーであるこの映画の中には、僕の知っている映像作品の中でも群を抜いて美しくロマンチックなシーンがいくつかある。一番はもちろんポンヌフ橋でのシーンだ。
ラストは確かこんなセリフで終わる。
「Ne vous réveillez pas bien, Paris!」
「目が覚めるな、パリよ!」と言った具合だ。
いつか終わってしまう夢のような時間が終わってしまわないように願う。裏を返せば、そうなることはわかっているという少しアイロニカルな表現である。そこにとても胸を打たれる。刹那的なもの、いつか終わってしまうもの、でも大好きなものたちに陶酔しているようで実は盲目的に本質と向き合えないということは往々にある。僕もたくさんあるし、好きなものほどそうだ。主人公の愛ゆえに自己中心的な様。自分と向き合って欲しいがために本当の幸せに目を向けようとしない様。その正直な心理的描写がとても共感できるのだ。気になった方は是非ご覧いただきたい。僕もまた見直そう。
ちなみに今日のタイトルにした「À bout de souffle」はヌーヴェルヴァーグの象徴とも言えるジャン=リュック・ゴダールとフランソワ・トリュフォーが作った「勝手にしやがれ」の原題である。この映画も大好きなのだが、このエピソードはまた後日。
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