思い返すと、もう暫く海外に行っていない。行く時間も行くお金もないという理由がきっと正しい。僕は社会人になるまでしばしば海外に行ったり、住んだりした経験がある。写真は20歳くらいで初めてヨーロッパに行った時のもの。ミラノだったはず。ホテルのベランダから撮った。不思議と、この時の空気をとてもよく覚えている。
時間は21時頃、季節は冬で寒かった。僕はタバコを吸いたくてベランダでしゃがみ込んでいた。そのホテルは繁華街から少し外れた所にあり、そんなに遅い時間でもないのに驚くほど静かだったのが印象的だった。
この写真がヨーロッパに来て初めて撮った写真なのだが、「あぁ、やっぱりヨーロッパの街はきれいだわ」という気持ちではなかった。まだまだ遠かったのだ。追いついていないのである。これはこの旅最後まで拭えないことなのだが、初めから自分の圧倒的異質感を肌で感じていた。ちんぷんかんぷんなイタリア語にヨーロッパ人の威圧感(本人達はそんなこと決して思っていない)などなど。アジアの島国生まれの血はしっかりと流れていることをここで体感する。「黒船が来た時もこんな気持ちだったのかしら」と思いながら、2日程でフランスへずらかることになる。
そんな胸中つゆ知らず、酒盛りしている同級生を横目で見ながら撮った20歳の1枚である。
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